歌唱技術を高める上で一番の教科書になるのがプロの歌唱です。

様々なプロの歌唱を分析して、良い所、悪いところ、癖などを吸収していく事で、聴き手にとって上手く聞こえる歌い方が身についてきます。

その一連のプロセスを明確にしたものとして、「守破離」があります。

守破離とは

日本には守破離という言葉があります。

まず師の教えを忠実に守る事から修行は始まり(守)、基本の型と自分を照らしあわせてより良い型を作り(破)、そこから更に卓越し、型というものから離れ自由になる(離)という教えです。

これを歌に当てはめると、まずプロの歌唱をよく分析し、何から何まで忠実に真似る事から歌唱技術の練習は始まります(守)。

そこから、自分自身の性格や長所、癖などと照らしあわせて、より自分らしく、良いと思われる歌い方を磨いていきます(破)。

最終的には歌い方という枠そのものから離れて、曲調や雰囲気に合わせて自分らしく自由自在に歌唱表現できるようにしていきます(離)。

真似できるものとそうでないもの

プロの歌手と自分の歌を比べる際には、自分が真似できる部分とできない部分を知っておく必要があります。

真似できるところ:

  • 声作り(喉の開き具合、声帯の閉じ具合、口の開き具合など)
  • 音程・リズムの正確性、しゃくりを入れる部分など
  • 表情付け・抑揚、ビブラートのかける箇所・タイミング、音の切り方など
  • 立ち振る舞い方、パフォーマンス

真似できないところ:

  • 元々の声の高さ、声そのもの

真似できるところは、声作り、歌い方や表情付けなどの部分です。 そして、真似できない部分は声そのものです。

目標としているアーティストがいる場合に勘違いしやすい部分ですが、「元々の声の高さ」、「声そのものの音色」だけは生まれ持った個人差があるため、どうしても真似できません。

男性はどう頑張っても女性の声を出す事はできませんし、逆もまたしかりです。 同性であっても、元々の声が低めの人から高めの人までピンきりであることは知らなければいけません。

同性であっても、生まれ持った声の高さは1オクターブほど差が出る場合があります。

また、声質と声そのものは違います。声質とは、泣いた声、可愛い声、深みのある声、息漏れした声など、発声に関わる筋肉を微調整することで作られる声を指します。

アーティストのモノマネをする際には、筋肉の調整次第で、他人であってもその人のような歌い方をすることができます。

それに対して声そのものは、その人が生まれ持った声帯の形や共鳴腔の大きさなどで作られるものです。こちらは真似することはできません。

守破離の具体的な流れ

歌唱技術を高めるためには、最初はアーティストの歌い方を真似ていく事が最も重要になります。

歌という正解のないジャンルでは、自分なりに闇雲に練習しても確実に路頭に迷います。そうではなく、歌が上手いと評価されている歌手のモノマネから入り、技術を徹底的に盗むべきです。

様々なアーティストのモノマネをしていくうちに、色々な歌唱テクニックが身についてきて、新しい曲でも「この人ならこのフレーズはこう歌うだろう」といったような考え方ができるようになります。

そうすると、同じフレーズ内でどの歌唱技術を使うかを自由に選べるような状態になってきます。そこまで来たら、守破離の破の段階、すなわち自分なりの歌い方を追求していく段階に入ることができます。

破の段階で勘違いしないで欲しいのは、全く新しい歌唱法を作るわけではないということです。

歌の歴史は長く、既にほぼすべての歌い方の技術は開拓され尽くされていると言っても過言ではありません。

要は数ある歌唱テクニックの組合せでオリジナルの歌い方を作るという感覚です。

歌手のモノマネと、自分なりに好きな歌い方のピックアップを繰り返していくと、だんだん自分なりの表現方法というものが形成されていきます。

これは毎回同じ歌い方をするというわけではなく、曲によって表現方法に幅がありつつも、誰の真似でもないような個性的な状態を指します。

これをどんどん拡張していくことで、最後の離の段階に入ることができます。

誰かの影響を受けよう

モノマネから入るということは、必ず歌い方において誰かの影響を受けるということです。

これに関しては、れみぼいすのスタンスとしては良い事であると捉えます。むしろどんどん色んな歌手の影響を受けて欲しく思いますし、自分があまり好きじゃない歌い方も積極的に真似してみて欲しいと思います。

要は最初から歌手としてのオリジナリティを追求しないようにしましょう。これをやるとほぼ間違いなく露頭に迷います…。

オリジナリティとは数ある歌唱技術の組合せであり、最終的には歌唱技術の好みや技法の使い所、さじ加減によってその人らしさというものが出てくるのです。