実は歌で感情を伝えるためには、歌の技術だけではまかないきれない要素があります。

例えば、仕草や顔の表情などです。

これらを上手く使うためには、一度「コミュニケーションの三つの要素」に触れてみると良いです。

目次

歌で感情を伝えるために知っておきたいコミュニケーションの三つの要素とは

コミュニケーションの3大要素

コミュニケーションの三つの要素とは、具体的には米心理学者である、アルバート・メラビアンが公表した研究結果のことです。

氏によると、コミュニケーションの三つの要素は、ボディーランゲージ、声のトーン、言語であり、 それぞれが占める割合は、ボディーランゲージが55%、声のトーンが38%、言語が7%であるとしています。

ここでいうボディーランゲージとは、顔の表情や、手の仕草等の、目で見える情報です。

声のトーンは、明るい声なのか、もしくは泣いた声なのかという、耳に関する情報です。

言語とは、言葉そのものの内容です。

例えば、ソファーに寝っ転がりながら、棒読みで「好きです」と言うのか、 こちらを見つつ、顔を赤らげながら、「好きです」と言ったのでは、 同じ言葉でも伝わる情報がまるで違うのがわかると思います。

これを歌に当てはめると、ボディーランゲージ(歌手の表情や仕草)で、55%は感情が伝わり、 声のトーン(歌手の声質)で38%の感情が伝わり、言語(歌詞情報)から7%の感情が伝わるという事でもあります。

さて、この情報で注目すべき点は2つあります。

  • 聴き手は歌手のボディランゲージから多くの情報を読み取る
  • 聴き手は歌詞の中身をほとんど重視しない

まず歌手の歌い方よりも、歌手のボディーランゲージから17%も多くの情報が読み取られます。すなわち、歌が下手でもパフォーマンスとノリが良ければ意外と何とかなってしまうものなのです。

そして歌詞の中身を重視しないということは、英語がわからないのに洋楽が好きな人がいるのはこのためであると言えます。

歌詞を知らずとも、曲の雰囲気や、歌手の表情や仕草、歌い方だけで、93%の部分の歌の心は伝わるのです。

歌におけるボディーランゲージ

もう少し各項目について見てみましょう。まず、55%の部分であるボディーランゲージについて解説していきます。 ここはCDの視聴などで歌手が見えない場合を除き、最も重要な部分です。

聴き手は歌手を見ながら歌を聴く

例えば、笑顔で飛び跳ねながら歌っていれば、楽しいんだなと伝わります。

逆に、泣きながらしんみり歌うと、悲しいんだなと伝わります。

歌に仕草や顔の表情を加えてあげるだけで、聴き手にとっては多くの情報が伝わることになります。

是非演技力を磨いて有効活用しましょう。

そしてもう1つ、歌で使うボディーランゲージの最大の武器が「ダンス」です。

人は、他人と同じ動作をすることで「繋がっている」という感覚を得ます。これを有効活用しましょう。

ヘッドバンギング、リズムに合わせたウォーキング、ジャンプ、手拍子等、これらはすべてダンスの部類に入ります。

曲の特定の部分で決めポーズを作っておき、聴き手一緒にポーズを決めるのも良いですし、 サビまたは曲全体の振り付けを作ってしまうのもありです。

また、視覚情報という面においては、服装や身だしなみにも十分気を付けないといけません。 身だしなみ1つで人の第一印象が決まりますし、曲の印象も決まってしまいます。

照明などの演出も当然歌の印象に関係してきます。

歌における声のトーン

次に、38%の部分である、歌における声のトーンについて解説します。 声のトーンは、ボディーランゲージの次に大事な部分です。

ポイントとしては、なるべく仕草や顔の表情と同じ感情の声を出すようにしましょう。例えば悲しい顔の表情で、楽しい声で歌うと聴き手は混乱してしまいます。

声の表情は、母音の調整でコントロールすることができます。

具体的には、明るい声(母音で調整)、すすり泣くように息継ぎをする音、 震えたような声を加えてあげると、より感情が伝わりやすくなります。

歌唱法には、ジャンルを強調するという役割もあります。オペラはオペラの歌い方をするからオペラなのです。

歌における言語

最後に、残りの7%である言語、すなわち歌詞の部分について触れます。

残念ながら聴き手は歌詞を7%しか重視しません。その証拠に、聴き手は歌詞情報よりも先に、歌手のルックスや、歌が上手いか下手かという事に目がいきがちですし、歌詞を間違えてもあんまり気にする人はいません。

そんな歌詞を有効に使うには、主に3つの方法があります。

  1. 歌詞を使って聴き手と一体になる
  2. 五感に働きかけるキーワードをちりばめて、感情を伝える
  3. 歌詞を読んでもらう

1. 歌詞を使って聴き手と一体になる

曲の同じ場所に同じ単語を繰り返し置く事で聴き手に覚えてもらい、一緒に歌う事で一体感を得る方法です。

例えば、フレーズの最後に、「~~~ソウル」と何回も来るように歌詞を作っておきます。

何回も同じ場所に「ソウル」が出てくれば、聴き手は覚えるので、一緒に歌う事ができます。

また、同じ単語を言う際に、決めたポーズを取ると、更なる効果が期待できます。

2. 五感に働きかけるキーワードをちりばめて、感情を伝える

歌詞に五感に働きかけるキーワードをちりばめておけば、聴き手はイメージがしやすくなるため、感情が伝わりやすくなります。

「この新種の野菜は、細長く、黄色で光沢があり、触ると柔らかく少し冷たい。臭いはあまりしないようだ。 食べるとグチュグチュという柔らかい食感と共に、甘みが広がる。」

この文章では、架空の野菜を説明する際に、五感に働きかける言葉を多くちりばめています。

言葉のパワーは計り知れなく、こういう単語をちりばめる事で、歌詞のメッセージ性が高まります。

3. 歌詞を読んでもらう

歌詞カードを配り、演奏中に歌詞を読んでもらう方法です。

ライブではあまり使えませんが、例えば動画としてインターネット上で聴いてもらう際には、 歌詞を動画の中に表示しておくと良いです。

後は歌手の表現力次第

正直歌詞が活きるかどうかは歌手の表現力次第というところもあります。

ポップスの歌唱のような、普段の話し声のように歌う場合は、歌詞をきちんと伝えるように意識して歌うことを心がけましょう。

感情が伝わる歌い方

ここまでボディーランゲージ、声のトーン、言語と説明してきましたが、感情を伝える上で一番大事なのは、それぞれの情報の一致です。

例えば楽しい歌を奏でたい時は、楽しい仕草や演出、楽しい曲調や声のトーン、そして楽しい歌詞である必要があります。

どれか1つでも不一致があると、聴き手は混乱してしまい、上手く伝わらない場合があります。

伝えるということは、わかりやすいということが大事です。