鼻声というのは、聴いていて違和感を覚える声の一つとされています。しかし、意外と多くの方が知らないうちに鼻声になっているのも事実です。

今回は鼻声かどうかを調べ、それを直す方法を書いていきます。

鼻声とは

まず一度、鼻声というのはどういう状態なのかを説明しておきます。
鼻声といっても、実は2パターンあります。

  • すべての言葉で鼻にかかった声(nasal)
  • すべての言葉で鼻がつまった声(denasal)

ここでは「すべての言葉で」というのがポイントです。日本語には、鼻にかけて発音する子音と、かけないで発音する子音があります。この区別が曖昧だと、鼻声になってしまうというわけです。英語では、すべての言葉が鼻にかかっていることを「nasal」と言います。逆に鼻が詰まっていることを「denasal」と言います。

鼻音(びおん)について

「鼻音(びおん)」とは、鼻にかけて発する言葉のことを指します。日本語の鼻音には、「マ行」、「ナ行」、「ン」があります。また、地域によっては「ガ行」も鼻にかけるそうです(ガ行鼻音といいます)。「カガミ」の「ガ」「タマゴ」の「ゴ」などです。ガ行鼻音に関しては、お住まいの地域に合わせてください。

これらの音は、鼻にかけて発声しなければいけません。

鼻音独特の音

鼻音は、鼻腔(びくう、びこう)という場所に響かせる事で作られます。鼻腔とは、鼻の奥にある空洞の事です。ここに音が響くことで、声に鼻声独特の響きが加わり、鼻声になります。

図の、三つの赤丸の内の一番上です。

鼻腔に音が響くには、息が鼻腔に通らなければなりません。先ほどの「マ行」、「ナ行」、「ン」、(ガ行鼻音)の音がこれにあたります。例えばマ行であれば、口を閉じて一度鼻から息を通してから、唇を開いて発音します。

鼻声かどうかをチェックし、直す

前置きが少し長くなりましたが、早速鼻声かどうかをチェックしてみましょう。チェック方法は簡単で、鼻をつまみながら一曲歌ってみるだけです。

この時、「マ行」、「ナ行」、「ン」、(ガ行鼻音)以外で鼻にかかった声になっていたら鼻声(nasal)になっています。この場合、鼻に息を通さないようにして、口から声を前に飛ばす感じで発音すると改善できます。

鼻をつまみながら、あいうえお、かきくけこ、さしすせそ…と発音していくのも効果的です(マ行、ナ行、ンは飛ばします)。鼻にかからなくなるまで練習します。

逆に「マ行」、「ナ行」、「ン」、(ガ行鼻音)で鼻にかからなければそれも鼻声(denasal)です。この場合は、例えばマを発音するときに、ンを先に発音してからマと言うと改善できます。「ンマ」といった感じです。鼻が詰まって息が通らない場合は鼻をかみましょう。

(余談)高音発声と鼻腔共鳴について

高音発声においては、しばしば鼻腔共鳴をさせろと教えられることがありますが、これは誤りです。

鼻腔共鳴をさせると鼻にかかった声になるため、わざと鼻声で歌う以外はおすすめしません。また、鼻声にさせずに鼻腔に共鳴させるのは不可能です。なぜなら鼻に息を通さない=鼻腔への入り口を閉じているということだからです。蛇足ですがどうしても鼻に通さず鼻腔に共鳴させたいのであれば、鼻をつまみながら鼻にかけて歌うことで可能になります。

また、喉を開くと高音発声は楽になりますが、これは鼻腔ではなく咽頭腔です。この2つはよく勘違いされるので注意しましょう。