今回は、声区融合について知っておきたい事を解説していきます。

声区融合とは

声区融合とは、地声と裏声の差をなくし、あたかも一本の声にしたような状態を指します。現代のボイストレーニングにおいて、発声の基礎固めとして目指す目標といったところでもあります。

声区融合をすることで、地声と裏声が同じような声になるため、地声と裏声を切り替えても違和感なく歌う事ができます。

ではどうやってそのようなものにしていくのでしょうか。過程を見てみましょう。

声区融合までの道のり

本来の発声器官は、声区融合をするためにできているわけではありません。

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上の図は、発声初期の状態です。まず地声に関しては、張り上げられる分声量が増すのに対し、裏声はファルセット(息漏れした裏声)になっている事が多く、なかなか声量が出ません。おかげで地声高音と裏声低音に音量のギャップが生じます。

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ある程度発声が鍛えられてくると、上の図のようになります。裏声低音域で、声帯の閉鎖と共鳴を得る事で、初期の状態よりも声量を得る事に成功しています。しかし依然として地声の張り上げには及ばないため、音量のギャップが生じています。

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ここから声区融合の本領発揮(?)となります。地声の張り上げを禁止することで、裏声低音域の音量に合わせてしまいます。この工程により、地声と裏声の音量が整うため、上手く繋がるようになります。

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おまけとして裏声高音域の声量も抑えてしまうことで、声が一本になります。これが声区融合の考え方です。

裏声の声量を増やすまでは良いが…

声区融合の目標は、あくまで地声と裏声を一本に繋げる事にあります。裏声の声量を増やすまでは良いのですが、その後は地声の張り上げを禁止し、本来地声で出せるはずの声量を削るという作業が入ることになります。

なので一本化した状態の声というのは、張り上げ発声に比べて圧倒的にパワフルさに欠けるというデメリットを背負うことになります。これが良い事なのか悪い事なのか、もう一度よく考えてみてください。

基礎はあくまで基礎

実際プロなんかを見てみますと、張り上げ発声をしている歌手と、綺麗に一本化させた歌手がいます。ロック歌手なんかはボーカルにパワフルさが必要なため、だいたいは張り上げ発声をしているのではないでしょうか。

声区融合というのはあくまで発声の基礎であって、本来の歌は、張り上げようがなんだって良いんです。そもそも基礎の段階で張り上げを禁止すること自体が、発声器官が本来出せる能力を制限しているという事に繋がるため、少し疑問に思えます。

発声基礎の目標は声のバリエーションを増やす事

このことを踏まえた上で、発声基礎の目標は声区融合に置かずに、声のバリエーションを増やす事に重点を置いておくと良いと思います。

張り上げ発声をすれば、地声と裏声の音量にギャップが生じます。しかしそれもちゃんとした一つの歌い方です。もちろんうまく地声と裏声を一本化して歌うのもありです。どちらもできるようにすることこそが発声の基礎固めといえるのではないでしょうか。

おまけ: 高音系男子のための換声点攻略講座

せっかく声区融合の記事を書いているので、おまけとして女性曲を原キーで歌いたい方や、ボカロ曲を原キーで歌いたい方のために換声点の攻略法を書いておきます。

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本来の発声の状態のまま高音曲を歌うと、地声と裏声の音量にギャップが出て換声点付近の歌いまわしが非常に煩わしい事になります。この状態では上手く歌えませんし、地声高音の張り上げを連続して行うとすぐに疲れてしまいます。

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なので地声張り上げを改善して平らにしてしまいます。こうすることで換声点を無理なく行き来できるので高音曲も歌いやすくなります。