ビブラートは、伸ばした音を上下に細かく振動させて、メロディを強調する技法です。
歌の技術としてもかなり有名で、ビブラートを綺麗にかけられるだけで歌が上手いと言われたりもします。
目次
ビブラートについての誤解
ビブラートを巡り、いくつかの誤解があるので解説します。
- ビブラートは発声が鍛えられれば自然にできるようになるため、あえて練習する必要はない
- ビブラートは意図的にかけるのではなく、勝手にかかるものである
- ビブラートは横隔膜でかけるものである
- ビブラートをかければ上手く聴こえる
1. ビブラートは発声が鍛えられれば自然にできるようになるため、あえて練習する必要はない
これは基本的に誤りです。
一部の天才を除き、ビブラートは練習しないと一生かけられるようになりません。
また、ビブラートができた後も練習を続けないと精度の高いビブラート(振幅のリズムが一定、速度、幅などを自由に変えられる等)になりません。
2. ビブラートは意図的にかけるのではなく、勝手にかかるものである
ビブラートは意図的にかけるものですし、狙ってかけられないと逆に問題になります。
もし歌うとビブラートが勝手にかかるようになるのであれば、普段の会話でもビブラートがかかってしまいます。
3. ビブラートは横隔膜でかけるものである
この意見も誤りです。
ビブラートは、2つの音を細かく上下させる技法です。
声の高さは、喉の筋肉の1つである、「輪状甲状筋」で調整しますので、息の強さをコントロールする横隔膜は全く関係ありません。
例え横隔膜を震わせたとしても、同じ音の高さで「アッアッアッ」としかなりません。
4. ビブラートをかければ上手く聴こえる
ビブラートを覚えたからといって、かければかけるほど上手く聞こえるかと言われればノーです。
例えば、合唱やコーラスにおいては、ビブラートをかけるのは逆に好ましくないとされています。
アイドルグループが歌う曲や、一部の電波ソングなんかでも、あえてビブラートをかけないで歌うスタイルをよく聴きます。
歌うジャンルや曲によって、ビブラートをかけるかかけないか、そしてかけどころを決めましょう。
ビブラートの練習
ここからビブラートを実際に練習していきましょう。
まず、ビブラートは2つの音を細かく上下させる技法です。 そのため、音程を素早く移動させるための喉の筋肉運動を覚える必要があります。
下記のエクササイズをこなすことで、ビブラートをかけるための筋肉運動を覚えることができます。
1. 地声と裏声を交互に出す
地声と裏声を交互に出す事によって、ピッチを取る筋肉を強制的に動かします。
慣れたら早くしてみましょう。
2. 音程を大きく揺らす
地声の低音から高音まで大きく上下させてみましょう。
同じように裏声低音から高音までもやってみましょう。
一定のリズムでやってみると次のステップが楽になります。
慣れたら早くしてみましょう。
3. 声を揺らす
- 立ちながら、「アー」と声を伸ばします
- 膝をかくかくさせて、体を上下に揺らすと同時に喉で声を揺らしてみます
- 声を揺らすのに慣れたら、あたかも膝をカクカクさせているイメージで、真っ直ぐ立ちながら声を揺らしてみます。
ここでのポイントは、とりあえず声を上下に揺らす感覚を身につけることです。
いきなり喉だけで揺らさずに、身体全体を使った補助を付けることをおすすめします。
「2.」とは違い、音程は細かく上下させてみましょう。
4. 一定のリズムで声を揺らす
- 人差し指を前に出し、上下させます。
- 指の動きに合わせて、声を揺らします。
ビブラートを綺麗に聞かせるためには、振幅のスピードより、一定のリズムでの振幅が重要です。
最初はゆっくりでも良いので、振幅のリズムがずれないようにひたすら練習してみましょう。これが上手くできるようになると、だいぶビブラートっぽくなります。
「ア」だけではなく、他の母音でも試してみましょう。
5. 振幅を速くする
「一定のリズム」という意識を保ったまま、少しずつ振幅のスピードを速くしてみましょう。
最初は人差し指の補助を付けて練習するのが良いです。
速く振幅させることができれば、遅いビブラートも速いビブラートも自由に調節可能になります。
是非スピードアップに挑戦してみてください。
実践でのビブラートのかけ方
基礎練習でビブラートがかけられるようになったら、実践でのかけ方を覚えていきましょう。
実践で上手くつかいこなすにはまたひとつ壁があります。
実践でビブラートをかけるコツ
最初はどうしても音を外したくないという心理が働き、ビブラートができないことが多いです。
ここは、伸ばす音であえて音を外す意識をもって少しずつ揺らしていきます。最初はゆっくり揺らしても構いません。
何回も挑戦していくうちに、少しずつ喉の筋肉がビブラートの動きに慣れていきます。
「あーーー~~~~」という風に、最初は音を伸ばしてから、ビブラートを加えてみる練習もしてみましょう。
クラシックスタイルとポップスタイル
ビブラートのかけ時としては、大まかにクラシックスタイルとポップスタイルに分かれます。
クラシックスタイルは、フレーズ中の伸ばす音すべてにかける意識をします。
そしてポップスタイルは、だいたいフレーズの終わりの伸ばす音のみにかけます。時に中間の伸ばす音でもかけます。
個人によってもかけ時が違うので、好きなアーティストの曲を沢山聞いてみて、どのタイミングでビブラートを使っているのか研究してみましょう。
ビブラートのコントロール
曲調などにより、ビブラートの形も変わってきます。
- 振幅の幅
- 振幅の速さ
- 基準の音より上げるか下げるか
1. 振幅の幅
幅が大きくなればなるほどビブラートが目立ちます。逆に小さければ小さい程さりげないビブラートになります。
例えば演歌などでは幅の大きいビブラートが好まれるイメージがあります。
ボーカルを目立たせたい時は大きめの振幅のビブラートにすると良いです。
あっさり歌いたい時は小さいビブラートにするべきです。
2. 振幅の速さ
基本的には曲のテンポに沿ったビブラートの速さが良いでしょう。
速い曲は速いビブラート、ゆったりした曲にはゆっくりのビブラートをかけます。
上手く調整できるようにしましょう。
3. 基準の音より上げるか下げるか
基本的には基準の音より下げたビブラートをします。
例えば「ド」の音であれば、「ドシドシドシドシ」といった感じでかけます。
ただしフレーズ終わりの余韻を持たせたい時など、基準の音よりも上げてビブラートをかける時があります。
演歌などでたまに見られます。
これらの項目に加え、ロングトーンからビブラートへの移行タイミングなどもあります。
ビブラートはかなり奥深いため、色々な歌手のビブラートを研究してみましょう。